最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)3936号 決定 1953年5月13日
本籍
福岡県三井郡立石村大字井上一三三八番地の二
住居
釧路市末広町四丁目一番地
興行師
西岡治
明治三五年一二月一六日生
右封印破棄被告事件について昭和二六年七月一八日札幌高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人鍛冶利一、同小谷勝市の上告趣意(後記)は、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。(執行吏北村源吾代理玉田憲二が本件仮処分命令の執行に当り、本件建物((劇場))に臨み、被告人西岡治の長男貞吉を被告人の代理人として立会わしめた上、被告人の右建物に対する占有を解き之を執行吏の保管に移し、その旨並びに被告人は右劇場の経営をしてはならない旨の公示板を同建物の壁の上に貼付したことは第一審判決挙示の玉田憲二に対する裁判官の証人尋問調書の記載により明らかである。とすれば本件仮処分命令は適法に執行せられ、右公示板の貼付は刑法九六条にいわゆる「差押ノ標示」に外ならないものであり、被告人が映画興行のため右劇場を使用することを禁ぜられていたことは前述のとおりであるから被告人が第一審判決確定のごとく、右仮処分命令に違反し、前記公示板の上から映画ポスターをかけてこれを見えないようにし、右建物を使用して、映画、興行を経営した以上、刑法九六条所定の「差押ノ標示ヲ無効タラシメ」た罪に該当することは勿論である。)
よつて刑訴四一四条、三八六条一項三号により主文のとおり決定する。
この決定は、裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)